ザ・ファーストスプーン、デザインの変遷。

ザ・ファーストスプーン、デザインの変遷。

現在のデザインに至るまで、時間をかけて試作とブラッシュアップを繰り返してきたザ・ファーストスプーン。約1年の間にどのような試行錯誤と変遷があったのか? 今回はザ・ファーストスプーンのルーツに触れてみたいと思います。

2021年3月に発表されたザ・ファーストスプーンは、初期のコンセプトが固まってデザインに着手し始めたのがちょうどその一年ほど前、2020年の春でした。初期設計を経て、最初のモックアップを作ったのがその年の夏頃。写真のいちばん下に写っているのが、ADが木粉を混ぜた紙粘土で作った最初期のモックアップのひとつです。持ち手の形状と大きさこそ製品版とそう変わらないように見えますが、口に入れる「壺」部分のサイズと形状、手元から口元までの距離が全く違うのがお分かり頂けると思います。

その隣にあるのが木地師・小林氏の手による最初の試作品、2020年10月末に作られたものです。前段階のモックアップを見た理学療法士・畑中氏に「このサイズじゃ誤飲しちゃうからダメ」と指摘され、根本的にサイズを見直していた頃のものです。こうして並べてみるとまだまだ小さいですね。

その後、実際の食卓でのテストとさらなるスタディを重ねて、製品版である現在のデザインに辿り着きました。

Baby KIJI ザ・ファーストスプーン

写真には写っていないものですが、試作初期の頃、まだ寸法が入っていない手描きのデザインラフを見た小林氏が「個人的な練習として」挽いて、漆で仕上げないままのものが数本存在していました。そして、実は製品版の寸法は(結果的に)その「練習版」に限りなく近づいたのです。改めて振り返ると不思議ですが、決まるべくして決まったサイズと形状なのかな、という思いもあります。

プロジェクトのスタートがいわゆるコロナ禍と重なったことなどでスタディや試作・調整をなかなか膝を突き合わせて進められなかった経緯もあり、私たちにとっては色々と感慨深いプロダクトでもあるザ・ファーストスプーン。この秋からたくさんの方のお手元に届き、食卓で笑顔とともに末永くお使い頂けることを楽しみにしています。